【中国】養老保険の省を跨る移転について

中国の社会保険は、納付と受給が基本的に各市単位となっており、市や省を跨る移転の可否やその後の受給条件等が異なる等の問題について、これまでも議論が繰り返されてきた。
特に、珠江デルタなど流動労動人口が集中する地域では大規模な「社会保険退出」現象が生じるため、その解決が急がれる問題でもあった。
この問題に対し、すでに2009年に、人力資源社会保険部、財政部「都市企業従業員基本養老保険移転受入暫定弁法」(国弁発「2009」99号、2010年1月1日施行)が公布されている。これは、省を跨る移転を可能とし、資金移転の比率と期限を統一、転入・転出地間の利益バランスを取ることを目指したものである。但し、当時は全国の社会保険情報の共有が不十分であり、地域間の格差を埋めるに至らず、新たな問題も発生し、一部の養老保険移転受け入れが実施できなかった。そこで人力資源社会保障部は2016年11月より「都市企業従業員基本養老保険移転受入れに関する若干問題の通知」(人社部規定〔2016〕5号)を公布・実施し、更に踏み込んだ改善を目指すこととなった。
本通知は、就業地変更等による見なし納付年数の計算地、過去納付情報不一致の問題、臨時納付口座の取扱い、追納養老保険費の移転、管理責任などをさらに明確にし、都市企業従業員養老保険移転受入れ業務をより一層着実に行うことを図っている。

本通知の主要内容の簡単なまとめは本稿の最後に掲載する。*1

広東省は、2008年12月23日に「広東省基本養老保険省内移転受入暫定弁法」を発布し、2009年1月1日より実施。更に、2014年度、広東省社会保険省内移転受入システムが整備され、省内の移転手続きはより一層簡素化されている。一方、省を跨る養老保険関係の移転受入に関し、広東省は2010年1月から「暫定弁法」(国弁発「2009」99号)に基づき実施しており、また、広東人力資源と社会保障庁は、広東省の実情に合わせ、2011年*2と2014年*3に通知を発布・実施し、全国でもいち早く、現段階ではスムーズに受け入れできている模様であるが、今般の通知の実施によって、広東省の養老保険の移転受入業務もより一層強化されると思われる。

(2017年1月作成)
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1.見なし納付年数の計算地
保険加入者の養老保険年金の受取地は「暫定弁法」に基づき確定する。
「暫定弁法」に定める見なし納付年数が複数の地域にある場合、各地で分けて計算する必要が
ある。
2.納付情報過去問題の処理
転出地が1998年1月1日以前の社会保険記録を提供できない、又は転出地の提供した納付情報により転入地が養老保険年金の計算・支給が出来ない場合、転入地は転出地に提供された納付時間記録に基づき、従業員ファイルの記載内容とにらみ合せ、その期間の対象年数を見なし納付年数として処理する。
3.臨時基本養老保険納付口座の管理
男性満50歳、女性満40歳の社会保険加入者が省を跨って就業する場合、養老保険の移転が出来ず、新就業先に臨時養老保険納付口座を開き、納付する。この臨時口座に過去の養老保険を追納した場合、臨時口座の性質が変わらず、養老保険年金の受取条件に達した時点で、臨時養老保険納付口座の規定に基づき、全額移転するものとする。
また、当該社会保険加入者が再度省を跨って就業する場合、この臨時養老保険納付口座を一旦封じ、養老保険年金の受取条件に達した時点で、養老保険年金の支給地の社会保険管理機構より全ての臨時口座を統括し、集計する。
4.一回性納付した養老保険費の移転
国家の規定に符合し、一括に納付した3年以上(3年を含む)の養老保険費に対して、省を跨る就業人員は養老保険を移転・受入する時、転出地が転入地に裁判所、監査部門、労働保障監察行政部門、又は労働争議仲裁委員会より発行された、一回性納付期間に労働関係を有することを証明できる法的な文書を提出しなければならない。
5.養老保険年金重複受領の処理
養老保険年金を重複に受領している社会保険加入者は、社会保険管理機構と相談したうえ、養老保険年金の受取口座として一つのみ保留する。それ以外の養老保険関係を終了し、個人口座の預金額を一括して返還する。
6.退役軍人用同保険移転受入
退役軍人の基本養老保険関係を安置地に移転された後、安置地は登記手続きを行い、養老保険関係を受入る。退役養老保険の補助年数を安置地の実際の社会保険納付年数として計算する。退役軍人が省を跨って就業する場合、1998年1月1日から2005年12月31日までの退役養老保険補助について、転出地が11%で転出資金を計算し、且つ個人口座の記録を調整する。その資金は統括資金から支出する。

7.都市企業集団の省を跨る養老保険関係移転の取扱
都市企業集団全体が省を跨って移転する時、「暫定弁法」の規定に基づき養老保険関係を移転・受入する。省政府主導基の移転は、二つの省政府が協商し、養老保険関係の移転・受入を着実に行う。
8.戸籍所在地社会保険管理機構統括責任
省を跨る就業人員が戸籍所在地に社会保険を加入せず、国の定めた養老保険年金の受取条件を満たす時の受領地が戸籍地になった場合、戸籍地の社会保険管理機構は対象人員に養老保険の移転受入手続を行い、各地の養老保険関係を戸籍地に統括し、養老保険年金を支給する必要がある。
9.本通知書の効力と適用対象外
本通知は2016年11月28日より効力が生じる。また、これ以前に出された通知や通達が本通知書の内容と一致しない場合、本通知に準ずる。
元の規定に基づき既に定年手続を行った社会保険加入者は本通知の適用対象にならない。

注釈:
*1: 「都市企業従業員基本養老保険移転受入れに関する若干問題の通知」
(人社部規定〔2016〕5号)の主要内容
*2: 2011年2月22日
「都市企業従業員基本養老保険関係移転受入暫定弁法に関する実施意見」
(粤人社函〔2011〕465号)を発布
*3: 2014年「従業員基本養老保険関係移転受入に関する操作基準の意見」
(粤社保弁〔2014〕503号)を発布

※各地の運用状況が異なる場合があります。実際の状況につきましては各所在地にて再度ご確認ください。
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